2016年に見た映画

もうね、2017年明けて2ヶ月も経ってるんですけど、一応2016年に見て印象に残った映画について書いておこうかなーと思います。
大体の作品がソフト化とかもされてきていますし。
今年は特にランキングもなく、感想も書いたり書かなかったりというハイパー怠惰スタイルでお送りします。

ブレイキング・ゴッド


ブレイキング・ゴッド [DVD]

監督:トニー・マオニー
脚本:アンガス・サンプソン、リー・ワネル、ジェイミー・ブラウン
出演:ヒューゴ・ウィービング、アンガス・サンプソン、リー・ワネル

如何ともしがたい事情からドラッグの密輸をすることになった気弱な主人公が警察に捕まった結果、監禁状態のなか証拠が出ないようにひたすらうんこを我慢するという実話をもとにしたオーストラリア映画です。
この邦題、原題とはかけ離れたタイトルを付けられていて、「ドラッグだからって『ブレイキング・バッド』に寄せるのは安直すぎ」という批判もあったんですが、あながち間違いではないというか、この作中では「絶対的支配者への勝利」が2つ重ね合わせながら描かれています。
地縁や血縁の板挟みになりひたすら排泄を我慢していた主人公が大きな反逆を行うまでの過程が、ほぼワンシチュエーションで緊張感を保ったまま描かれているという巧みさに舌を巻きました。
2016年はワンシチュエーションで展開される作品が豊作でしたが、『ブレイキング・ゴッド』も間違いなくその中の一本に入るのではないかと思います。
 
 

ドリーム ホーム 99%を操る男たち


ドリーム ホーム 99%を操る男たち [DVD]

監督:ラミン・バーラニ
脚本:ラミン・バーラニ、アミール・ナデリ
出演:マイケル・シャノンアンドリュー・ガーフィールドローラ・ダーン

サブプライムローン問題により、財産を失った人々とその徴候にいち早く気がついて財を成した人の物語という点で、同時期に公開された『マネー・ショート』ととても近いんですが、こちらは家を失った側が主人公ということもあり、全体的に重苦しい雰囲気の作品。
差し押さえのシステムを利用して荒稼ぎをしている不動産屋役のマイケル・シャノンが本当に素晴らしくて、いくらシステムがクソでもそのクソに手を突っ込んで金を稼いでいる時点で自分もクソみたいな諦観が常ににじみ出ているのがとても良かったし、だからこそ映画の終わりに彼に起こる事とは裏腹に安堵したような表情で発せられるセリフが非常に印象的でした。
この作品には、家を差し押さえられる人々が沢山出てくるのですが、自分の今住んでいる「この家」に対する執着心がすごく強いのがおもしろかったですね。アメリカの映画とかドラマを見ていると、持ち家があるということが社会の構成員であることの証左になっているのかなと思います。
 
 

ちはやふる上の句


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監督・脚本:小泉徳宏
出演:広瀬すず野村周平、真剣佑

広瀬すずさんをスクリーンで初めて見た時、映っているだけで画面を保たせる力が異常だなと思ったのが強く印象に残っているのですが、そんな「広瀬すず力(ぢから)」が今作においても遺憾なく発揮されていました。
後編にあたる『下の句』とくらべて『上の句』においてはヒロインであるちはやの人物描写が希薄で、ただの百人一首モンスターのようにも見えます。しかし、人々はそんなちはやに引きつけられ、自ずとドラマが発生する。そのような圧倒的な求心力と空洞性は『桐島、部活やめるってよ』の登場しない主人公、桐島のようであり、それがスクリーンに映って説得力を持つのはひとえに広瀬すずさんの存在に担保されている部分があると思いました。
また、『上の句』では自分の殻にこもることで自尊心を守っていた「机くん」という登場人物が、圧倒的な光を持つちはやに出会ったことで己の影と向き合うことになるという展開が後半に置かれているのですが、圧倒的な才能の輝きを持つ人と対峙した時の鬱屈に心覚えがある人は涙なしでは見られない展開というか、涙なしには見られません。
映像面の話をすると、一昨年『ヒロイン失格』を見たときにマンガ特有の誇張表現や比喩表現を映画に翻訳する手法の独自進化っぷりに驚かされたんですが、『ちはやふる』ではそれが更に進化しているように感じました。
例えばですけど、かるたが壁に刺さるんですよ。勢いが強すぎて。
そういった劇画的な表現と、スローモーションを多用したファンタジックな表現が相乗効果を生み出していて、非常におもしろかったですし、このような表現がどんどん進化していったら良いなと思います。
 
 

ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>


ミュータント・タートルズ シリーズ ブルーレイセット(2枚組) [Blu-ray]

監督:デイブ・グリーン
脚本:ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック
出演:ミーガン・フォックス、ウィル・アーネット、スティーブン・アメル

この作品には、「虚構のヒーロー」と「真のヒーロー」が登場します。「真のヒーロー」とはもちろんタートルズのことであり、「虚構のヒーロー」とは前作においてシュレッダーを倒したという嘘をつくことになりタートルズの代わりに街のヒーローとなったヴァーンのことです。
前作のラストでは自らの意思でその姿を隠すことを選択したタートルズですが、やはりティーンエイジなのでその処遇に納得できているわけでもなく、陽の光を浴びて堂々と歩きたい、そういった気持ちを抱えています。
そして今作において、タートルズには人間になれるかもしれないチャンスが訪れるのですが、その場面においてタートルズだけでなく、ヴァーンやエイプリルなどの人々が取った行動には王道でありながらも極めて現代的であり、ヒーロー論としてかなり心を揺さぶられました。
画面全体にたぎる過剰さや登場人物がアホ過ぎて逆に話がサクサク進むテンポ感、新キャラのケイシー・ジョーンズの車大好きボンクラ野郎感、ミーガン・フォックスなど、マイケル・ベイ印な部分も多分にあるのですが、全体的な「未知との遭遇」ものっぽさや全体的な優しさは『アース・トゥ・エコー』のデイブ・グリーン監督ならではなのかなという印象を受けました。
 
 

グランドフィナーレ


グランドフィナーレ [Blu-ray]

監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演:マイケル・ケインハーヴェイ・カイテルポール・ダノ

控えめに言っても最高の映画です。
 
 

ヒメアノ~ル


ヒメアノ~ル 通常版 [Blu-ray]

監督・脚本:吉田恵輔
出演:森田剛濱田岳佐津川愛美ムロツヨシ

タイトルの出し方オブザイヤー。
あの瞬間の「決定的なものごとが始まってしまって後には戻れない」感は何回見ても鳥肌が立ちます。
吉田恵輔監督の底意地の悪さが炸裂していて素晴らしいです。
 
 

葛城事件


葛城事件 [Blu-ray]

監督・脚本:赤堀雅秋
出演:三浦友和南果歩新井浩文

トッポかと思うくらい最初から最後まで途切れることなくヤダみのぎっしり詰まった作品。恐ろしくつらいけれども、時折挟み込まれる黒すぎるユーモアに笑ってしまう。一体どうしたらここまで悪意に満ちた話を作れるのか知りたいです。
この作品では、とある一家が崩壊するまでの物語が描かれているわけですが、何が辛いかって誰一人悪意を持って行動していない、それなのにどんどん状況が悪化していくんですよね。
三浦友和さん演じる父親も、別に家族を不幸にしようとして粗暴で尊大な振る舞いをしているわけではなく彼が理想とする父親像や家族像というものに近づこうと必死に頑張っているだけで。
誰に対しても何に対しても一切の救いをもたらさない、その容赦なさに感動しました。
 
 

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生


バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 [Blu-ray]

監督:ザック・スナイダー
脚本:クリス・テリオ、デヴィッド・S・ゴイヤー
出演:ベン・アフレックヘンリー・カヴィルジェシー・アイゼンバーグ

アカデミー賞主演男優賞を獲得した弟(ケイシー・アフレック)とは対照的に、お兄さん(ベン・アフレック)出演の今作はラジー賞を4部門受賞してしまいましたが、妄執にかられていたバットマンがジャスティスを誕生させる瞬間とか、ジェシー・アイゼンバーグ演じるレックス・ルーサーの悲しさとか、やはり圧倒的に美しくて強く印象に残っています。
DCEUはMARVELと比べると一般的な評価も芳しくないですし、製作過程におけるゴタゴタが聞こえてくることも多いですが、絶対にこの挑戦を最後まで続けて欲しいと思っています。
 
 

日本で一番悪い奴ら


日本で一番悪い奴ら Blu-rayスタンダード・エディション

監督:白石和彌
脚本:池上純哉
出演:綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄

犯罪映画でもあり、コメディ映画でもあり、そんな犯罪に手を染めた奴らの青春映画でもある作品。
 
 

ロスト・バケーション


ロスト・バケーション(初回生産限定) [Blu-ray]

監督:ジャウム・コレット=セラ
脚本:アンソニー・ジャスウィンスキー
出演:ブレイク・ライブリー

ジャウム・コレット=セラ監督による『フライト・ゲーム』に引き続きなワンシチュエーションサスペンス映画。
作品のほとんどが海の中の小さな岩礁の中で繰り広げるのにも関わらず途切れることの無い緊張感には、とてつもない演出力(ぢから)とブレイク・ライブリー力(ぢから)を感じましたし、サメに対処するための手を変え品を変えのアイディアが本当にフレッシュでした。
近年、変なサメの映画が量産されておりますが、スタンダードなサメ映画の新たなる傑作だと思います。
 
 

DOPE/ドープ!!


DOPE/ドープ!! [Blu-ray]

監督・脚本:リック・ファムイーワ
出演:シャメイク・ムーア、トニー・レボロリ、カーシー・クレモンズ

ギャングが幅を利かせている地域に住む90年代ヒップホップが大好きなオタク青年が、ちょっとしたトラブルから薬物取引に巻き込まれるという筋書きのクライムコメディなんですが、ステレオタイプな価値観や固定化したルールをいかにしてひっくり返すかという点においてこれが今のHIP HOPなのかなと思いました。
あと、映画全体の構成がものすごく巧みで、主人公がずっと抱えていた小さな問題をラストに解決するのですが、その見せ方に鳥肌がたちました。
ファレル・ウィリアムス音楽監修をしていますし、ファッションも美術もLAのロケーションもきれいで、エンタメとして気軽に楽しめるタッチでありながら極めて現代的な問題を取り扱っているというそのバランスも好きです。

アスファルト


監督・脚本:サミュエル・ベンシェトリ
出演:イザベル・ユペール、ジュール・ベンシェトリ、マイケル・ピット

 
 

COP CAR/コップ・カー


COP CAR/コップ・カー [Blu-ray]

監督:ジョン・ワッツ
脚本:ジョン・ワッツ、クリストファー・フォード
出演:ケヴィン・ベーコン、 ジェームズ・フリードソン=ジャクソン、ヘイズ・ウェルフォード