余白に対するノスタルジー

ビック
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ビックロ
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明日ビックロがオープンになるらしいです。ビックカメラとユニクロという組み合わせの妙とか、「今までのユニクロのイメージをぶち壊した」とか言われている広告とかでそれなりに話題となっているようで。

そんなビックカメラ新宿東口新店の、ビックロ前・ビックロ後の画像が手元にあったのでとりあえず並べました。

なんでこんなものの写真を撮ったのかというと、ビックロになる前の状態を初めて見た時、その余白の多さを良い意味で気持ち悪く感じて、ポスターやら垂れ幕やらで覆われてしまう前にその姿を手元に残しておきたいと思ったからで、その時はまさかあんなロゴが取り付けられることになるとは思ってもみませんでした。

ビフォーのような、巨大な構造体でありながら空白を感じさせる存在感みたいなものは、いわゆるクリスト建築とも共通していて、他にも、巨大ではないけれどパイロンとか、都市の過密状態の中で空白を感じさせる存在というのはやはり事故っぽくて良いなぁと思います。

たしかに、最近の家電量販店、特に都市型店舗には、外装のすっきりとしたものが増えていますが、それにしたってあそこまでの情報のそぎ落としっぷりは他では中々見ることができないレベルだと思います。
他の家電量販店の外壁を思い浮かべると、垂れ幕とか街頭ビジョンとかがあって、もっと情報量が多いのが普通です。
壁面自体も、ガラスが使われていたり、タイルを使うにしても2種類以上だったりテクスチャが付けられているのが一般的なんじゃないでしょうか。

それに対して、ビックロになる前のビックカメラ新宿東口新店にはそのようなものがほとんど無く、ぱっと目に入ってくるのは白いタイルに覆われた壁面と赤いロゴのみ。つるっつるの白い箱と言っても過言ではないくらいの様相です。
唯一の装飾物とも言えるロゴだって、通常の《ビックカメラ》じゃなく、《ビック》のみ。今考えると、ここらへんがビックロの伏線だったのだろうし、あのとき感じた奇妙さには、そういったまだ完成していないもの特有の座りの悪さや安定しなさみたいなものが含まれていた可能性もあるのかなと思います。

それにしたって、そんな状態で何ヶ月も営業しちゃうのとかやっぱりちょっとおかしいし、そういったものが新宿の駅のすぐそば大通り沿いにあるということに対して密かなワクワク感を持っていたので、あの余白が消滅してしまったのは結構残念に思っていて、今でも時々携帯に保存されているビフォー写真を見ては「この頃は良かった」などとわりと本気で言っていたりするのですが、まさか自分がただの白い壁に対してノスタルジーに近い感情を抱く日が来るとは考えたこともなかったので、人生ほんとうに何があるのか分からないなと思いました。