2023年の読み切りWEBマンガ

主旨とか

  • 2023年に公開された読み切りマンガでおもしろかったもの、印象に残ったものをまとめます
  • webで読めるもののみです
  • 自分のための記録用の趣が強いので、順不同だしコメント書いたり書かなかったり
  • サンデーうぇぶり、コミックdays、ジャンプ+に偏ってます
  • 思い出したら後で足したりするかも

リスト

コーポ仲吉の管理人(富士太郎)

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要素の組み合わせ方とテンションがおもしろい。
 

窓の向こうに。(米麹ぽっぽ)

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朴訥な感じの絵柄と距離感のあるコミュニケーションがいい。
 

さよならプロロ(佐々木カイキ)

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プロロかわいい。絵柄がひとつに定まってないのがテーマとあっている気がする。
 

ルーカスと吸血鬼(光莉)

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人間のペット飼いたい(白井もも吉)

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タクヤの忘れ物(田中ちゃん)

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恋するピンポンダッシュ(椿ケン)

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捻じくれた欲望のスピード感とふにゃふにゃした描線のマッチ具合がいい。
 

モラトリアムをあげる(直山なお)

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絵柄もかわいいけど夜のシーンの白と黒のバランスがおしゃれ。
 

Hic(偉智川いと/フジ田マル夫)

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しゃっくりが止まらないというシンプルなスタートからの迂回具合がおもしろい。
 

月の光に照らされて(ラライヤ佐藤)

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遠い日の陽(横谷加奈子)

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ともだちになった魚(どのみち孤独)

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主人公のキャラが最高
 

エイリアン☆ディスコ(本尾野聡介)

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角刈りの兄鬼(インカ帝国

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ドキドキヌプヌプメモリアルはさよなら(深津ザオウ)

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虹色のこいびと(岬かいり)

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とこいわのかみ(フィビ鳥)

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鹿野くんって美味しそうだね(莎々野うた)

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あの部屋の幽霊さんへ(三崎しずか)

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断ち切れ!オリベーダイス(松田タクミ)

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マカとルリ(丸梅千代子)

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ほんのりオカルト日常系かと思いきやどんどん話が遠くに転んでいくのが良い。
 

ギャラクシーハイウェイ(岡田大)

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干からびたミミズ(河野大樹)

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犬が出てくる夢のシーンがいい。

下校オニ(せがわひろわき)

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2023年に見た映画

何回書いても体裁の定まらない記事。
2023年は208回映画館で映画を見た。新作旧作混じっているのと複数回見たものがあるので、新作は多分195本くらい。
 

 
  

ベスト

レッド・ロケット(ショーン・ベイカー


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元ポルノ男優がLAから地元のテキサスに都落ちして嫁の実家に転がり込み再起を図るという話。主人公は全財産22ドルなので車があるわけもなく、テキサスのだだっ広い道をひたすら徒歩や自転車で移動していて、その情景からひしひしと伝わる(責任感も含めて)何も持っていない感がとてもいい。
仕事が見つからないので結局大麻の売人になるとか、近所のドーナツ屋のかわいい未成年の女の子をナンパした挙げ句ポルノ業界に返り咲くのに利用しようとするとか、映画の中で起きている出来事はだいたい最低だし、舞台となっている街も色々行き詰まっているように見えるのに、作品全体に妙な陽気さがある。しかしその一方で、作中の随所でテレビから流れる2016年の大統領選のニュースは終わりつつある何かを暗示するようにほのかな影を落としている。
そういったアンビバレントで繊細なバランスと、チャーミングなフレッシュさに溢れた映画。
  

哀れなるものたち(ヨルゴス・ランティモス


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東京国際映画祭で見た。
ヨルゴス・ランティモスの映画は毎回おもしろいなと思いつつ、そのシニカルさが好きになれないことが多かった。『哀れなるものたち』もシニカルさはあるのだが、ベラ・バクスターというキャラクターが知的好奇心によってぐいぐい進んでいくので、人間という生命が持つ前向きなエナジーが(その暴力的な一面も含めて)肯定されていたのがとても良かった。
へんてこりんな世界観を成立させている衣装や美術、ジャースキン・フェンドリックスの劇伴の素晴らしさは言わずもがな、エマ・ストーンのベラ・バクスターっぷりも、珍しく二枚目役のマーク・ラファロの調子外れっぷりも、ラミー・ユセフの純真なかわいさもとても良かった。
もうすぐ劇場公開が始まるのでまた見れるのがとても楽しみ。
 

ノック 終末の訪問者(M・ナイト・シャマラン


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シャマランにはいつまでも私にとっての未解決事件であって欲しい。
シャマランのけじめと祈り『ノック 終末の訪問者』感想(ネタバレあり) - 紙の類
 

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像(ジェームズ・グレイ


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シュガーヒル・ギャングとディスコとザ・クラッシュが流れる80年のクイーンズに住むユダヤ中流家庭の小学生(ジェームズ・グレイがモデル)が主人公。
映画監督の自伝的な作品はなんというかこう気恥ずかしさがあってあまり見るのが得意ではなく、この作品もアンソニー・ホプキンス演じる祖父はかなりイディアルな人道主義者として描かれているのに対して、ジェレミー・ストロング演じる父親の振る舞いの解像度とかなんとも言えない感じはあった。
しかし、主人公の行動があまり見たことがないバランスなのが良かった。一応善悪の区別はついていそうな雰囲気はあるものの、純粋なわがままだったり友達のためだったりという素朴な願望で課外授業をフケたり窃盗を試みたりとスッと悪いことをしてしてしまう。その結果浮き上がる理不尽な社会構造の割り切れなさを絶妙なバランスで描いていた。あと唐突に現れるトランプ一家の迫力がすごい。
  

イニシェリン島の精霊(マーティン・マクドナー


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きっかけは中年男性同士のつまらない諍いなのに優しさが少しずつ損なわれていく様子を丁寧丁寧に描いていてめちゃくちゃおもしろい。島から出ない者、出れない者、出なければならない者の違いが残酷。
あとセリフがとにかく音として心地良い。
 

ザ・フラッシュ(アンディ・ムスキエティ


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どこまで意図的なのかは分からないが、DCEUの終焉を深く印象づけてしまったこの映画が喪失を受け入れる話だったのは、DCEUやベン・アフレックが演じるバットマンに対してそれなりの思い入れがあった自分にとってはとてもありがたかった。
インターネットではだいぶおもちゃにされていたCGIの使い方も、人類最速というその速さゆえに周りが全て遅く感じるだけでなく自分とすら上手く折り合いがつけられないバリー・アレンの感覚の表現として、すべてが上手くいっているわけでは無いにせよとても良かったと思う。CGIは物理学的に精巧なシミュレーションである必要はないのだから。
 

大いなる自由(セバスティアン・マイゼ)


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かつてドイツに存在していた男性同性愛を禁じる法律によって繰り返し投獄されていた男の話。
とにかくラストシーンがめちゃくちゃいい。フランツ・ロゴフスキはこの作品に加えて『フリークスアウト』『Passages』とどの作品の演技もすばらしかった。
 

Pearl パール(タイ・ウェスト)


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パールを演じるミア・ゴスのふわふわとした発声がすごい。
パールの夢が叶うことはないとわかっているのに、スポットライト、映画館のスクリーン、映写技師の青い瞳、パールの白い歯、輝くものは牧場の外への道筋を照らしているように見えるので、「もしかしたら」の可能性が頭をよぎってしまう。悲しさとおかしさの同居具合がとても良かった。
 

カード・カウンター(ポール・シュレイダー


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映画の冒頭でモーテルにチェックインするときに「would you like some coffee?」と訊かれた主人公が「how old?」と返すことで「おっこの人物はややこしそうだぞ」と思わせる。その上でこちらの想像を超える主人公の行動で頭を殴ってくる感じにベテランの技を感じた。回想シーンの魚眼レンズを使ったVRぽい撮影もかっこいい。
また全体的に体温の低さを感じる演出・演技の中でティファニー・ハディッシュのクールだけど少しウェットさもある演技が良かった。
 

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(ダニエルズ)


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ダニエルズは前作の『スイス・アーミー・マン』にしろ、バカバカしさを貫き通して感動にまで繋げているのが本当にすごいしずるい。ロサンゼルスの映画館でアジア系の一家に囲まれて観たという思い出も込み。
 
 

その他おもしろかったもの

Passages(アイラ・サックス)

TIFFで観た。まだ日本公開決まってないっぽい。
フランツ・ロゴフスキ、ベン・ウィショーアデル・エグザルコプロスの三角関係から繰り広げられる視線のやり取りや顔の見えない会話がとても良かった。
 

ハント(イ・ジョンジェ

中盤まで何かが常に動いているというか、すごい速度で走っている乗り物に振り落とされないようしがみついているような謎のテンションの高さがある。後半はやや失速するというか、その乗り物が自らの速度に耐えきれずどんどんバラバラになっていくけどそれでも走り続けているような恐ろしさがある。例え話がすぎる。初監督ということでどこまで意図しているのか分からないが、あのギリギリ破綻しているようなバランスをこれからも見たい。
 

BAD LANDS バッド・ランズ(原田眞人

原田眞人の映画がおもしろいのは自分の倫理観と照らし合わせて結構困るし、原田眞人の映画のおもしろさというかリズム感は原田眞人の映画でしか味わえないので更に困る。
サリngROCK演じる林田のキーボードの叩き方がぺちぺちしててよかった。
 

ファースト・カウ(ケリー・ライカート)

基本的に「ここではないどこか」を希求するアメリカ映画において、どこにも行けなかった二人の骨が幸せそうに見える奇跡。
 

フェイブルマンズ(スティーブン・スピルバーグ

プロムのシーンが素晴らしいのはもちろんとして、芸術のために食事が犠牲になっていた光景を見させられると『レディ・プレイヤー1』の「現実で美味しいごはんを食べるのが一番幸せ」のセリフについて改めて考えてしまう。
 

夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく(酒井麻衣)

ありがちなストーリーと、白岩瑠姫の演技の下手さによって逆にこの映画の良さが際立っている。ロケ地の選び方、プロダクションデザイン、構図の取り方などから絶対に平凡な画面にしないという気合が感じられる。教室の中でAirdropで画像を送り合ってこっそり会話するシーンは青春映画における大発明。
 

異人たち(アンドリュー・ヘイ)

これもTIFFで観た。
正直一回観ただけでは見落としているニュアンスが山程ありそうなので、公開されたらまた観たい。観た後とにかくずっと余韻に圧倒されていたことだけは覚えている。
 

怪物の木こり(三池崇史

かつて子どもたちに人体実験をして頭にチップを埋め込み人為的にサイコパスを作り出した人たちがいました、実は主人公はその被害者の一人でサイコパスな弁護士としてブイブイ言わせていましたが、ある日チップに強い衝撃が加わったことでサイコパスではいられなくなりました、とかなりバカバカしい設定ではある。しかし、自身や社会の変化によってそれまでできていた超人的だったり非人道的な振る舞いができなくなってしまい自分の足元が崩れたような感覚になるというのは、現在いろんなところで起こっている切実な問題だと思う。
三池崇史特有のくどさはかなり抑えめではあるが、画面や演出はしっかり格好いいし、亀梨和也の顔がちょっと疲れているのとか、刑事役の菜々緒の髪の毛がボサボサしているのとかディティールも丁寧でよい。こういうバランスの映画をもっと観たい。
 

TALK TO ME トーク・トゥ・ミー(フェリッポウ兄弟)

若者たちがドラッグの代わりに降霊でトリップしまくるという設定の時点でもうおもしろそうだし、そしてその期待にきっちり応えてくれる。最初は思いっきり異物として写されていた幽霊が、徐々に現実に混ざり合っていく質感の変化がいい。
主人公の友人の親が厳しくて婚前交渉とかホームパーティー絶対許しませんという厳しさの上で、話の展開も結構保守的なのは気になった。
あと出てくる犬がすごいむちむち*1
 

バーナデット ママは行方不明(リチャード・リンクレイター

プロット自体はなんてこと無い話だったりするのだが、とにかくディテールのユニークさと説得力がいい。
主人公が限界に近づいたタイミングで発せられる「ベッドの上に置いてあるタオルで折った動物が耐えられない」というセリフの強さ。
 

ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE(クリストファー・マッカリー

なんなんでしょうね、この映画。どこまでやったら映画が/M:iというフランチャイズが/トム・クルーズというスターが壊れるのかという耐久テストというか、その境界線の反復横跳びをしているように思える。
アクションシーンを先に設定する投機的なプロセスにより極めて抽象的になったストーリーやセリフのやりとり。メインディッシュのアクションシーンは全部のせの2乗みたいな過剰さ。作中ではイーサンがいやいや飛んでいる崖から喜々として何回も飛び降りるトム・クルーズの姿を映画の公開前に飽きるほど見ているという反転。
劇映画としての欠点は多数あるとしても、この映画の作られた過程が結果的にテーマと合致しているし、風圧でプルプル震えるトム・クルーズの頬が全てに答えを出してしまっている。
 

雪山の絆(J・A・バヨナ

1972年に起きたウルグアイ空軍機571便遭難事故を題材とした映画。登場人物の紹介も早々に飛行機が雪山に突っ込むので、その後の地獄のような日々の長さが際立つ。あと、墜落シーンの「ものすごい勢いで人体が押しつぶされてる様子」の映像表現がキレキレ。
真冬の雪山で、食料もなく、捜索も来るかわからないという絶望的な状況なのに、皆で詩を発表しあったり、写真を撮ったり、ようやく救援が来るとなったときに工夫をして身だしなみを整えたりとか、そういう人としての尊厳を守るための知性の輝きの尊さを感じるシーンがとてもよかった。
 

オペレーション・フォーチュン:ルセ・ド・ゲール(ガイ・リッチー

胡散臭い役のヒュー・グラントは何回観てもとても良いのはもちろんだが、ハリウッドスター役のジョシュ・ハートネットの絶妙な小物感がとても良い*2
全体的な印象は軽妙ないつものガイ・リッチーという感じではあるが、ハッタリや嘘の扱いにガイ・リッチーのエンタメ映画に対する美学みたいなものが見えてじんわり感動した。
 

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(ジェフ・ロウ)

こういうテーマの映画で悪役にICE CUBEをキャスティングできるのはアメリカのエンタメの強みだと思う。ゴロツキの名前がバッドバーニーとか、スーパーフライの登場時にWake up in the skyが流れるとか3秒で考えたみたいなジョークがいい。
コミック調でコマ落とししたような3DCGアニメがここ最近増えている気がするけど、この映画の仕上がりが一番好み。
 

フリークスアウト(ガブリエーレ・マイネッティ)

フランツ・ロゴフスキ演じる悪役が未来視ができる設定で、自分で作曲した体でピアノでガンズ・アンド・ローゼズを弾いたりしてるのがユニークで良かった*3
 

ジョン・ウィック コンセクエンス(チャド・スタエルスキ

これもある意味でデッドレコニング的な耐久テスト感ある映画だが、子供が人形で遊ぶみたいにもっとストレートにジョン・ウィックを壊しに行っている気がする。
 

イノセンツ(エスキル・フォクト)

子役の顔と演技が良いんだけど、主人公の子の真顔のふてぶてしさと笑顔のかわいさの絶妙さが特に良かった。視覚効果のエフェクトなしで描かれるサイキックバトルも格好いい。
 

エストロ その音楽と愛と(ブラッドリー・クーパー

この映画はミュージカル映画ではないけど、すべての映画のミュージカルシーンはこの映画のOn the townのシーンくらいのリズム感を持っていて欲しいと思った。
 

法廷遊戯(深川栄洋

原作では教室だった無辜ゲームの開催場所が大谷資料館になっていたり、ヒロイン・美鈴の住居が治安の悪そうな雑居ビルになっていたり、ロケーションとその撮り方が紀里谷和明岩井俊二を足して2で割った感じだった。主人公・清義と美鈴の関係が現代社会の基盤のひとつである司法制度を滅茶苦茶にするという話と言えなくもないので、セカイ系ぽいアプローチをするのはアレンジとしておもしろいなと思う。
 

FALL フォール(スコット・マン)

こういうワンシュチュエーションのサバイバルものって限られたアイテムをどう使うかがキモだけれど、「使えるものはなんでも使う」の度合いが飛び抜けてて良かった。続編やるらしいけどどういう展開になるのか一切予想がつかない。
 

映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ(作田ハズム)

壊れた・必要とされなくなった工場の悲哀という点でまさか『アリスとテレスのまぼろし工場』や『すずめの戸締まり』とつながるとは思わなかった。
 
 

まとめ

コロナ禍で公開が遅れていたり、コロナ禍以降の企画が公開されたりといった影響のせいか、振り返ってみると2023年はおもしろい新作映画が多かった気がする。
しかしながら自分の映画を見るにあたっての基礎的な知識や視点の乏しさを改めて思い知ったり、『ヘル・レイザー』『雨に濡れた舗道』『アル中女の肖像』等の旧作映画のおもしろさにぶん殴られたりしたので、2024年は新作の見る本数を減らして過去の名作をきちんと見たり本を読んだりに時間を充てたいなと思った。

*1:そしてあらゆる登場人物に「臭い」と言われまくっている。こんなに臭いって言われる飼い犬映画で初めて見た

*2:ジョシュ・ハートネットオッペンハイマーでも魅力的な演技をしていたし、シャマランの新作にも出るらしいのでとても楽しみ

*3:改めて考えると自分はこういうアホみたいな一発ネタをきっちりやりきっているのに弱すぎるかもしれない

今年買ったもの(2023年)

良かったもの

アイリスオーヤマ 静音シュレッダー

【静音タイプ】アイリスオーヤマ 静音シュレッダー 家庭用 細断枚数4枚 マイクロクロスカット 超静音 連続使用10分 細断速度2.0m/分 ダストボックス7.5L A4/100枚収容 大容量ダストボックス 細断くず量確認窓付き ホワイト P4HS75M-W
重篤な怠惰さを抱えて生きている結果、住所書いてある伝票とか書類とかを捨てるために細かくちぎるのがめんどくさくて郵便物等を溜めてしまうことがよくあったので買いました。めちゃくちゃ細かく裁断されるのでとても楽しい。前よりは郵便物等を溜めなくなりました。
 

Cyber-shot RX100V

ソニー コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot RX100V ブラック 1.0型積層型CMOSセンサー 光学ズーム2.9倍(24-70mm) 180度チルト可動式液晶モニター 4K動画記録 DSC-RX100M5A
ここ数年写真はiPhoneで事足りていたので手持ちのカメラも処分してたんですが、ゴースト出たりとかカリッとし過ぎとかでうーんとなることがあったので、アメリカ旅行に行くタイミングで買いました。旅行のときに持っていくくらいで正直そこまで使い倒しているわけではないのですが、下の画像みたいなiPhoneでは出せない階調表現とかがあるので買ってよかったです。


 

サングラス

サングラス
自分の目が日光に弱いがちな気はしていたので以前からサングラス買わないとなーと思ってはいたのですが、試着するたびにその似合わなさにげんなりして購入しないまま今年になりました。しかし今年の夏暑すぎたし日光による疲れで体調崩すのいい加減アホらしいなとなったので似合わなさのげんなりを乗り越えて購入しました。かけて外出るとまじでめちゃくちゃ楽なのですごいです。
画像は一番最初に買った物なんですが、その後髪型を変えたらフォークソング歌手みたいな見た目になってしまったので、調光レンズのもっと眼鏡ぽいやつと、フェス用の軽いやつを買いました。来年以降はこれ以上買いすぎないようにしたいです。
 

SUQQU メルティングパウダーブラッシュ 10

SUQQU メルティングパウダーブラッシュ
去年くらいまでは基本オレンジかコーラル系のチークを使ってたんですが、加齢のせいかなんか顔が黄ばんで見えるようになってしまったので違う系統のを買いました。
ふわっと馴染む感じがするし、ケース自体も薄くて軽いから旅行の時とか持ち運びやすいです。買ってすぐ廃盤になってしまったので、大事に使おうと思います。
 

冷凍馬刺し

今年パーソナルジムに通っていて低脂質・高タンパクな食事を課せられていたのですが、サラダチキンと違って食べても悲しい気持ちにならないのでいいです。
 

エピキュリアン カッティングボードS

エピキュリアン 木製 まな板 カッティングボード S ブラック 食洗機対応 日本正規品 アウトドア キャンプ 10806S
普通の大きいサイズのまな板しか持っていなくて、それだと上記の馬刺しとか小さめのものを切りたいときに取り回しがわるいので小さいやつを買いました。洗うのも楽だしとてもいいです。
 
 

微妙だったもの

革靴

数年前からローファーとショートブーツが欲しくて今年ついにpellicoのローファーとALM.のショートブーツを買ったんですが履いて出かけると足がズタボロになるのでだめだなとなりました。ちゃんと試着してるんですけどね。扁平足の悲しさ。その内ちゃんと足に合うやつをオーダーしたい。
 

LEDフロアライト

楽天とかで7000円位で売ってる細長いやつです。PCデスクの近くに間接照明ぽいのが欲しくて買いました。もっとちゃんと見て買えばよかったんですけどリモコンが赤外線じゃないのでスマートリモコン使えなくてON/OFFがめんどくさくてあまり使ってないです。安くてもちゃんと見て買おう。
 

VAPE

仕事中にガム噛むと噛みすぎてしまうので、その代わりになるかなと思って買いました。最初s toneという使い捨てのを買ったんですがカフェインが入っているせいか舌がビリビリするので、DR.VAPEを買いました。ガムの代わりにはならないなというのが今のところの結論です。

『ホーンテッドマンション』感想

なぜか真夏に公開されたハロウィーン映画。多分そろそろDisney+で配信されるはず。

自分はフィクションの中の「(任意の二人称単数)is the one」描写、平たく言うと運命の人に出会った瞬間の描写が好きなんだけど、ホーンテッド・マンションのそれはとても良かった。本作では冒頭にそのシーンがあるので、そこで心を掴まれてしまった感がある。

年越し直前のバーで主人公のベンは後の妻となるアリッサに話しかける。ベンは量子レンズを研究する優秀な物理学者で、アリッサは幽霊屋敷のツアーガイド。フィクションでお馴染みのナード描写として自分の仕事の内容を専門用語増し増しの早口で説明するベンに対して「目に見えないものを見せることをしてるのね、私も同じような仕事」と言うアリッサ。アリッサの聡明さと優しさが一発で表現されているだけでなく、このセリフにある半ば無理筋でも共通点を見つけて他者に歩み寄ろうとするのがこの映画に通底する姿勢のように思った。

霊界や霊的な存在をよく「あちら側」と言ったりするが、「あちら側」「こちら側」と区分することをこの映画は否定する。それを象徴するのが、主人公が使う霊写カメラの存在だろう*1
前述の冒頭のシーンから時間が飛んだ現在、ベンはアリッサを失い、研究者の職は妻の存在を捉えようとして開発した霊写カメラが原因で失職、行きつけのカフェの店員に「垢じみたにおい (smell like yesterday)」と言われるような生活をしている。そんなところにとても胡散臭い神父のケントが現れ、幽霊屋敷の調査をベンに依頼する。
破格の報酬に釣られて幽霊屋敷の調査に赴くベン。このタイミングではカメラのバッテリーがないのも無視しておざなりに調査をしているため、もちろんその姿を捉えることはできない。しかし、幽霊に取り憑かれたことがわかったベンは屋敷へと戻り、カメラを使って存在しないとされているものを見えるようにすることで、主人公たちは亡霊たちの正体に近づいていくのだ。

正直、映像面・演出面においてはうまいとは言えず、アトラクションを再現したであろうビジュアルやエフェクトもチープさのほうが目につくし、悪役がドナルド・トランプなのは意図はわかるが少し安易に感じてしまう。
しかしながら、ベン(ラキース・スタンフィールド)、ケント神父(オーウェン・ウィルソン)、屋敷の持ち主のギャビー(ロザリオ・ドーソン)、yelpの評価が高い霊媒師(ティファニー・ハディッシュ)、幽霊屋敷を研究している大学教授(ダニー・デヴィート)が一同に会した時の絵面のよさや、ジョークの温度感のちょうど良さなど、否定しきれない魅力があると思った。

*1:このカメラのエフェクトが全体的にゲームの『零』ぽくてちょっと笑った

Oppenheimer見たメモ

そもそもセリフに専門用語が多い上に、マット・デイモン以外の出演者は皆もごもご喋るし衣擦れの音は被りまくりだしで2割もセリフは理解できていない*1のであくまでも現時点での覚え書き。

8月下旬、台北の美麗新影城で鑑賞。

映画を通してオッペンハイマーは相対するものたちの板挟みになっている。共産主義と反共、昔の恋人と妻、科学的探究心と倫理、戦争の英雄としての名誉と後悔などなど。

その板挟みによりオッペンハイマーの心はずたぼろになり、ついにはスパイの疑いをかけられる。しかしそんな彼を守り最終的に名誉を保つのは、科学と国という大きな存在への忠誠心(Loyalty)によってである。

一般的に言われているように、クリストファー・ノーランは映画についての映画を撮る監督である。そこで映像的・物語的ハッタリが少ない本作では一体何がそれにあたるのであろうか。

本作の映像的なハイライトのひとつはまず間違いなくトリニティ実験のシーンであろう。核実験の爆裂な光と音を並んで見る関係者たちは観客のようである。また、待機小屋の小窓からその様子を見るオッペンハイマーの姿は映写機技師、またはモニターで仕上がりをチェックする映画監督のようでもある。その光と音は観客に大きな興奮をもたらすが、その興奮も束の間、原爆が実際に投下された後のオッペンハイマーはその光がもたらす壊滅的な影響のビジョンに苛まれることになる。更には共産主義に傾倒していた過去からスパイの嫌疑をかけられ、機密にアクセスするという特権を失ってしまう。

理想を追い求める心から生み出されたものが誰かを傷つけたり、さらには政治の道具になってしまうこと。ここから、近年映像作品が政治的闘争や論争の的になりがちなことや、エンターテイメント業界をとり巻くキャンセルカルチャーを想起するのは安易すぎるかもしれない。

しかしもしそのような意図があるのであるならば、この映画がその題材であったりBarbenheimerのミームに巻き込まれたことで日本において論争の的となり、更には現時点において国内で正規に見れる目処が立っていないというのはとても皮肉なことだと思う。

*1:この直後にBlue beetleを見たらセリフ大体聞き取れたので子供向け映画は最高!となった

松葉杖生活の記録

GWの真っ只中にすっ転んで足首を怪我した結果、1ヶ月ほどギプス固定と松葉杖で生活していました。
初めて松葉杖で生活してわかったことや思ったことがあったので記録として書き残します。

転んだ原因

わざわざ立川までシャマランの『ノック 終末の訪問者』を見に行ったところ映画館のスクリーン内の段差に気づかず転倒。映画はちゃんと見た。

前提

松葉杖生活と言っても怪我した方の足を地面につけられる状態だったので、松葉杖をついていたのは基本屋外になります。

日常生活

家事

前述の通り両足をつけられる状態だったので、そんなに不便はなかったです。
ただ、入浴に関しては当初ゴミ袋+テープぐるぐる巻きで対処していましたが、普通にめんどくさいのとゴミ袋が無駄なので後で市販のギプスカバーを買いました。もっと早く買えばよかったと思います。
あと、GW中にどうしても部屋の模様替えをしたくて無理やり家具運んだりしましたが、後で足痛くなったのでやめておいたほうが良かったです。

移動

電車移動は周りの人がせかせかしてる中で邪魔になってないかを気にしてしまったり、階段の上り下りが多いのがだるかったりで基本的にタクシー移動をしてました。
階段の上り下りとか普段は何も考えてなかったので結構参りました。
あと舗装された道路でも結構地面に杖が引っかかることが多くて、地面って案外でこぼこしてるんだなと思いました。

服装

松葉杖で脇がこすれる&ギプスの端が布(特にサテンとかナイロンとか糸の細くて柔らかいやつ)に引っかかるので、傷んでもいい服か生地が強い服しか着る気になりませんでした。

ストレス

ギプス着けたあとの1週間とギプス外れると思ったら再装着された直後は、身体が思うように動かせなかったり、街中で悪目立ちしているような気がしたりで結構ストレス溜まって情緒不安定でしたね。かといって出かけるのもできないし、買い物もできないし、暴食しようとしても動かないからお腹空かないしでストレス解消がうまくできませんでした。

遊び

映画

出かけるのはめんどうだが見たい映画は公開されるので何回か映画館に行きました。普段は休みの日は4本位はしごしたりしてたんですが、映画館から映画館の間の絶妙な距離の移動がしんどかったので逆にタクシー移動が正当化できる距離の映画館ではしごしたりしました。というのもあって一日に見れる本数が2本とかになりました。
そしてよく行く新宿のシネコンはスクリーンが複数のフロアに分かれているところが多いのですが、エレベーターで移動できるところはありがたいなと思いました。バルト9エスカレーターしかないのと、踊り場で結構迂回させられるので疲れました*1
あと、コンセッションでカップの飲み物買うと松葉杖使えなくなるので、ボトルの飲み物売ってる映画館はありがたかったです。
そういう観点でいうと、新宿の映画館で足を怪我したときにおすすめなのは新宿ピカデリー*2です。

ライブ

怪我した翌日と翌々日のライブのチケットを前から購入しておりまして、さすがに翌日のはギプス装着したてだったのと長丁場のイベントだったので行くのを諦めたんですが、翌々日のライブはどうしても見たいし、ワンマンだから時間も短めだろうということで無理やり参加。しかしながら会場のWWWXは一度行ったことがある方ならおわかりかと思うんですが、4階まで階段で登った後2階分の階段を下るというスーパーバリア仕様な入場経路となっています。気合でなんとか登って降りてしたんですが、別経路がないかスタッフの方に聞いてみればよかったですね。
ライブ自体は一番うしろの壁ぎわスペースを確保できたので寄っかかりながら見ましたが、めちゃくちゃ楽しかったので行ってよかったなと思います。

旅行

また運が悪いことに5月末の週末に2週続けて福岡と大阪に行く予定*3がありました。
福岡に関しては好きな土地だし久しぶりということもあって2泊3日の旅程を怪我前に組んでいてとても楽しみにしていたのですが、ほとんど歩き回れなかったのと気後れして飲食店にもあまり入れなかったので、近いうちにまた行きたいです。移動手段としてはJALの飛行機を使ったのですが、搭乗口がめちゃくちゃ近くてフルキャリア様々だな〜と思いました。
大阪に関しては当日の移動に自身がなかったので新幹線で前のりをしました。新幹線に乗る駅までの移動が乗換案内どおりにできる自信がなかったのと色々が面倒くさくなって自由席にしてしまったのですが、全然席空いてなくて松葉杖でうろうろすることになったのでちゃんと指定席買ったほうがいいです。
それと、福岡と大阪で合わせて3つのホテルに泊まったのですが、その内2つで廊下の一番端の部屋を割り当てられて移動が大変だったので、エレベーターホールに近い部屋にできないか事前に連絡しておけばよかったと思いました。
 

結論

転ぶと意外と簡単に骨折するし、骨折すると大変なので足元には気をつけて歩きましょう。あと、骨折したまま映画の撮影を続けたトム・クルーズは本当にすごい。

*1:ちなみにバルト9行った時は混んでる時間帯にかち合ってしまって1階からエレベーターに乗るための列の最後尾がはるか彼方に存在していたので絶望的な気持ちになりました

*2:ただ上映環境があまり良くないのが欠点

*3:暴太郎戦隊ドンブラザースファイナルライブツアー

シャマランのけじめと祈り『ノック 終末の訪問者』感想(ネタバレあり)


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『ノック 終末の訪問者』あらすじ
同性カップルのアンドリュー(ベン・オルドリッジ)とエリック(ジョナサン・グロフ)、養女のウェン(クリステン・ツイ)の一家が山小屋で休暇を過ごしていると、レナード(デイヴ・バウティスタ)、サブリナ(ニキ・アムカ=バード)、エイドリアン(アビー・クイン)、レドモンド(ルパート・グリント)の4人組が訪ねてくる。訪問者たちは山小屋に押し入り「家族のうち1人を犠牲に選ぶか、全人類の滅亡を選ぶか」という究極の2択を突きつける。
 
 
以下の文章は『ノック 終末の訪問者』『オールド』『ミスター・ガラス』の結末部分に触れています。
 

陰謀論とシャマラン

スーパーパワーを持つ人間とその力を抑え込もうとする組織の存在が明らかにされ世界に衝撃を与えるという『ミスター・ガラス』のラストはいかにも陰謀論的だった。そもそも、M・ナイト・シャマラン作品で繰り返し語られている「自分の使命に気づく」「世界の違うありように気づく」というストーリーは、陰謀論者のよく言う「目覚め」と近い感触がある。
しかしながら「陰謀論」がかつてわずかに持っていた魅力的な響きを失い、社会にとって有害でしかないものになってしまって以降、シャマランは自作に存在する陰謀論的傾向をどう取り扱うかについて苦慮していたように思う。
『サーヴァント ターナー家の子守』では身近な人が妄執に取り憑かれたときの戸惑いが描かれていたし、前作『オールド』では陳腐すぎるネタばらしをする事で陰謀論のにおいを取り去ろうとしていたように思える。
それらの作品を経て製作された最新作『ノック 終末の訪問者』は、陰謀論的思考と自作で描かれている信念はある点において決定的に異なっている、あるいは「異なったものにしていかなければならない」ということを宣言する、シャマランにとってのケジメのような作品だった。
 

明るいヴィジョン・暗いヴィジョン

アンドリューがエリックを両親に紹介するが、両親はそれを受け入れられないという回想が第一幕と第二幕の間に挿入される。このシーンの背景ではアレサ・フランクリンが歌う「Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive*1」が流れている。この曲の歌詞は以下の通りだ。

You got to ac-cent-tchu-ate the positive
E-lim-i-nate the negative
Latch on to the affirmative
Don't mess with Mister In-Between
You got to spread joy up to the maximum
Bring gloom down to the minimum
Have faith or pandemonium
Liable to walk upon the scene
To illustrate my last remark
Jonah in the whale and Noah in the ark
What did they do, just when everything seemed so dark?

詳細な和訳は各自ググっていただくとして、ざっくり訳すと「ポジティブになれ ネガティブになるな 中途半端もだめだ 喜びを最大に 悲しみを最小に 信念を持て 暗闇の中でヨナやノアが何をしたのか」という内容で、シャマランが自らを「eternal optimist on steroids (極度の楽天家)」と表現していることを踏まえると、この歌詞がこの映画の内容をそのまま表しているように思えてくる。
現在進行形で謎の4人組に襲撃を受けているし、回想で描かれる記憶も苦々しいもの*2でポジティブでいられるかよという感じではあるが、ポジティブに考えること、明るいヴィジョンを信じることが陰謀論とシャマランの決定的に異なる部分ということなのではないだろうか。
 
レナードら訪問者たちは世界の崩壊とそれを防ぐ残忍な方法のヴィジョンに取り憑かれている。繰り返し表れるそれに戸惑いながらも、「人類を守るために従わなければならない」とも確信している。
その一方で脳震盪を起こしたエリックは光の中に何か(figure)を見る。エリックが何を見たのかは作中で明確に描写されず、まるで映写機を覗き込んだようなわざとらしい光が画面上に表れるだけであるが、そのヴィジョンが自分を犠牲にするという最後の決断につながる。
そして、エリックは自身を犠牲にすることをアンドリューに納得させるため、ウェンとアンドリューが幸せに暮らしている様子を伝える。その明るいヴィジョンによって「永遠の暗闇」と表現された人類の終焉は防がれる。暗いヴィジョンの実現を阻止するのは明るいヴィジョンなのである。
 
ここで、なぜエリックが自分の命を犠牲にしなければならなかったのか、正直ストーリー上は不明瞭ではあるが「明るいヴィジョンを他者に託すことができるのはエリックだけだったから」と考えることができる。アンドリューはその短気な性格や過去の経験から事象を悪い方向に捉え怒りに駆られやすい。ウェンも、両親と良好な関係を築いているし、作中では明確に描かれていないものの、産みの親から捨てられたことや育ての親から口唇裂を治されたことで生まれ持った自分を否定されたような経験をしている。そのような経験に引っ張られることなく、常に他者への優しさを示せる人物がエリックであったということではないだろうか。

〜ここから拡大解釈〜
1秒24コマのフィルムを明滅させることで暗い部分を脳が勝手にスキップし、映像が立ち表れるというのが映画の仕組みだ*3。つまり、事象の明るい部分だけを見るというのは映画のことも指しているのかもしれない。前作の『オールド』において、家族とともにあることと映画人としてあることは相容れない存在として描かれていた。そして、最終的には家族とともにあることがより良いものとして選択されていた。それは今までのシャマラン作品とは全く異なるメッセージであった。しかしながら今作において、(上記の拡大解釈を適用するのであれば)映画という明るいヴィジョンを信じ世界を守ることと、家族を想うことは同時に達成できることであると見ることができる。
〜拡大解釈終わり〜 
 

シャマランのけじめと祈り

以上のように、陰謀論的な思考との違いを明示してはいるが、暗いヴィジョンに取り憑かれた人たちを突き放しているわけではない。レナードは、作中で流れる『Strawberry Shortcake: Berry in the Big City*4』について「共感と寛容 (empathy and tolerance) を教えてくれる」と評していたが、それは本作についても言えるのではないかと思う。物語の終盤でエリックは訪問者たちの行動について「彼らにも守りたいものがあったんだろう」と共感を示す。これは、ヘイトクラムの被害者となった後、ボクシングを始め、拳銃を購入したアンドリューの行動に対しても重なる部分がある。
明確に描写されない部分多い本作で、特に解釈が分かれているであろうラストシーンについても同様だ。かつて自分に暴力を振ったレドモンドの車の中でアンドリューは訪問者たちの人生の痕跡を見る。その後カーステレオを点けるとかつてエリックとともに歌った「Boogie shoes」が流れ出す。これは、自分にとって一番受け入れがたい存在も自分と同様に悲しみや喜びの中で生き、同じ音楽を聞く人間であるということを表しているのではないだろうか (もちろん、エリックからの「Always together」のメッセージでもある)。
 
明るいヴィジョンに従って行動すべきであるという違いを明確にした上で、このような共感と寛容を示すのがとてもシャマランらしいけじめの付け方であるし、ウェンとアンドリューが戸惑いながらも前を向いて進んでいくこのラストシーンがこの上なく美しいと思った。
しかしながら、暴力をもって自己の使命を叶えようとする存在に対して共感と寛容だけで現実問題どうにかできるのかというと、それはラストに流れるBoogie shoesと同じくらい場違いで空々しく聞こえるかもしれない。シャマランが本作に関するインタビューで「自分は楽天的である」ということを繰り返し述べているのも、様々な問題を抱えた現実を踏まえた上での「それでも前向きでいなければならない」というある種の自己暗示、あるいは祈りの言葉のようでもある。
かつてのシャマランであれば、このようなテーマでもっと誇大妄想的な救いを描いていた可能性もあるのではないかと思う。何が真実かを見極めるのが難しいのに、常に選択を迫られる、しかもその選択が誰かを傷つける可能性がある、という非常に困難な現実を見つめた上で、それでも世界がより良くなることを望むシャマランの選択を私も信じたいと思った。

knock-movie.jp

*1:Aretha Franklin - Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive (Audio) - YouTube

*2:7時間かけてやってきた母親がやっと口を開いたと思ったら冷蔵庫を褒めただけという地獄!

*3:この仕組みは最近だと『エンパイア・オブ・ライト』や『フェーブルマンズ』で人生の比喩として使われていましたね、みんな大好きですね

*4:原作だとこれは『スティーブン・ユニバース』だったんですけど、さすがにそのままだとちょっと古いとかなんですかね